2011年11月20日日曜日

派遣法改正案ホネ抜き 民主党は誰と寄り添うのか?

東京 江戸城東御苑 二の丸雑木林(2011-11-16)
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棚ざらしになっていた労働者派遣法改正案が大幅に修正され今の国会で成立見込みという。
民主党が、自民・公明両党の要求を容れ、改正案の根幹になる部分を削除した。

産業界はこれを歓迎。
連合もこれを容認。

マスコミでは、知る限り、大手全国紙は沈黙。
地方紙は批判的論調のものもある。

経団連に愛される民主党

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まず東京新聞
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(見出し)
派遣法改正案 骨抜き修正は禍根残す

(記事)
懸案だった労働者派遣法改正案が大幅に修正され今国会で成立する可能性が強まった。
社会問題化した“派遣切り”再現を防ぐ規制策が骨抜きになりかねない。
労働者保護の原点に立ち戻るべきだ

・・・・・(修正の内容、略)

修正内容には驚くばかりだ。
これでは現行案が目指す派遣労働者の処遇改善は到底困難だ。
・・・・・(略)

労働者派遣法は一九八五年「派遣事業の適正な運営確保と派遣労働者の就業条件整備」を目的に制定されたが、相次いで緩和された結果、労働者保護が薄れてしまった。

派遣という働き方が問われたのはリーマン・ショックの時だ。
失職したとたん仕事も住居も失う。
全国に出現した“年越し派遣村”は大問題となった。
不安定雇用の削減・解消が大切なのだ。

派遣会社の中には禁止業務である建設現場に労働者を送り込んだり、データ装備費と称して多額の手数料を徴収するなど違法・不法行為が目立っていた。

製造業への派遣禁止は残すべきだ。
すでに自動車など主要企業は派遣から期間工採用など直接雇用への転換が進んでいる。

連合が修正案を容認する姿勢を打ちだしたことは残念だ
これでは「すべての労働者の処遇改善」のスローガンが色褪(あ)せる
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次に、神戸新聞
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(見出し)
派遣法改正/骨抜きでは格差を広げる

(記事)

民主党が、労働者派遣法の改正案を大幅修正する方針を固めた。
自民党などの反発に配慮して、仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ登録型派遣や製造業派遣の原則禁止を除外する方向で検討している。

いずれも改正案の柱の部分である。
これでは派遣労働者の雇用安定という法改正の目標そのものが成り立たなくなる恐れが強い。

改正案は、リーマン・ショック後、電機メーカーなどの「派遣切り」が相次いだことなどを受けて、2010年4月に政府が衆院に提出した。
突然の大量解雇が社会不安につながったことも背景に、製造業の原則禁止が盛り込まれた。

・・・・・(略)
民主党は大幅な譲歩による早期成立を選んだ形だ。

しかし、いま派遣労働者の待遇を改善する施策が後退することになれば、国内で顕著になってきた格差社会をさらに広げかねない
労働者派遣法は、通訳など専門性の高い分野に限定して1986年に施行された。90年代から本格化した規制緩和の流れの中で業種が増え、企業側の要望を受けて小泉政権下の2004年に対象業務が製造業まで広がった。

派遣法の規制緩和は多様な働き方を可能にしたが、賃金水準が低い非正規雇用の拡大を後押ししたことは否めない。

ことしの労働経済白書は、90年代後期に成人した30代前半の男性が非正規雇用から抜け出せない割合が高く、正規雇用への転換を支援すべきと訴えた。

非正規雇用の増大は、国内消費の縮小、少子高齢化、社会不安の増大という悪循環と深く結びついている。
派遣法改正案はそうした悪い流れを断ち切る役割が期待された。

厚生労働省によると、派遣労働者数は08年度の約400万人から10年度は267万人まで減少した。
派遣法の規制強化を目指す政権の動きや、技能継承の面から正規雇用の重要性を見直す企業が増えたことなどが背景にある。
こうした流れを後退させてはならない。

野田佳彦首相は所信表明で、中間層の厚みが日本の底力として、分厚さを取り戻すことを強調した。
その理念に照らし合わせて判断すべきだ。
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次は、京都新聞
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(見出し)
派遣法改正  放置の末に骨抜きとは

(記事)
・・・・・(略)

当初案からは大きな後退だ。

製造業派遣規制など核心部分の施策抜きでは法改正の狙いだった派遣労働者の雇用安定が実現するとは思えない
派遣制度の抜本的見直しにもつながらない

・・・・・(略)

民主党は製造業派遣の原則禁止などを衆院選マニフェスト(政権公約)でうたい、政権交代によって、置き去りにされた働き手に支援の手を差し伸べようとしたのではなかったか。

労働者保護の観点から、法施行以来初めて規制強化の方向にかじを切るはずが、なんのことはない逆戻りするだけだ

・・・・・(略)

民主党は「ねじれ国会」の下でこれ以上、審議を遅らせれば、期間工ら有期労働者や、パートタイム労働者の待遇改善なども含めた労働法制全体の見直しに影響しかねないと判断したのだろう。

しかしそうだとしても、こうもあっさりと看板政策を引っ込められては、国会運営や野党対策を優先して事足りる程度の政策だったと見られても仕方あるまい。

子ども手当などの見直しに続いて膨らんだ期待がしぼむ思いだ。

欧州の金融危機や円高の長期化で、日本経済の先行きは不透明感を増している。
雇用が一段と悪化する恐れもある。

非正規労働は補助的な収入源にとどまらず、家計を支える人にも拡大している。
今こそ不安定な雇用状況に歯止めをかける施策の実行が必要なときだ。

・・・・・(略)

与野党は意見が対立する製造業派遣問題などを避けて通らず、働く人々の立場に立った論議を重ねて制度改革につなげるべきだ。
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最後に、北海道新聞
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(見出し)
派遣法改正案 骨抜きの修正は疑問だ

(記事)
・・・・・(略)

当初は派遣労働者の待遇改善のため、大胆な規制強化に踏み込んだが、修正で中身は大幅に後退する。

いったんは法案として具体化しておきながらの撤回である。
その理由の説明とともに派遣労働者を守る手だてをきちんと整えてもらいたい

・・・・・(略)

しかし、法改正の趣旨は派遣労働の規制強化を通じて、より安定的な働き方の実現を目指すものだったはずだ。
これでは不安定な現状を追認することになりかねない。

2008年秋のリーマン・ショック後、製造業などで大量の派遣労働者の雇い止めが起き、社会問題化した。大手自動車会社は派遣労働を直接雇用の期間従業員に切り替えてきた。
ただ国内の景気はなお低迷しており、世界経済も欧州債務危機で先行きは不透明だ。
大量の「派遣切り」が再現しないとは言い切れまい。

東日本大震災直後の混乱や自粛ムードによる個人消費の低迷で、多くの非正規労働者が真っ先に解雇されたことを忘れてはならない。

派遣労働の規制強化を断念するのであれば、雇用や生活の安定を保証する方策が大事である。

民主党は09年の衆院選マニフェストで、製造現場への派遣を原則禁止するなど雇用の安定を明記していた。
政権公約と今回の修正の整合性について説明してほしい。

野田佳彦首相は「中間層の厚みを増す」との理念を掲げている。
中間所得層を増やすには安定した仕事が欠かせない。
膨らんだ非正規の割合を減らし、雇用の受け皿を増やす具体策を早急に示すべきだ。
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