2012年8月28日火曜日

イラク派遣の空自隊員、「事故隠し」と国を提訴。派遣中の事故で帰国させず、不十分な治療で障害残る。

東京新聞
イラク派遣の空自隊員 「事故隠し」と国提訴へ
2012年8月27日 07時05分
 米国主導のイラク戦争で空輸を担うため、二〇〇六年に中東のクウェートへ派遣された航空自衛隊の三等空曹の男性が現地で米軍のバスにはねられ、後遺症の残る大けがをしていたことが分かった。男性は来月、空自が「事故隠し」に走り、まともな治療を受けられなかったとして国に損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こす。イラク特措法で派遣された自衛官が国を訴えるのは初めて。
 男性は一一年に依願退職した新潟市中央区関屋、無職池田頼将さん(40)。顔や腕に障害が残り、身体障害者四級に認定された。
 池田さんは〇六年四月、通信士として愛知県の小牧基地からクウェートのアリ・アルサレム空軍基地に派遣された。事故は七月四日に米軍主催の長距離走大会で発生。先頭を走っていた池田さんは軍事関連企業の米国人女性が運転する米軍の大型バスに後ろからはねられ、左半身を強打して意識を失った。
 池田さんによると、空自衛生隊には治療設備がなく、首にコルセットをはめただけ。事故四日後から三回連れて行かれたクウェート市内の民間診療所では意思疎通ができず、まともな診察を受けられなかった。上官は防衛庁長官(当時)の現地視察の際などはコルセットを外すよう命令。事故から帰国までの二カ月弱、早期帰国の措置も取られなかった。公務災害補償の手続きも池田さんが指摘するまで行わないなど、事故を隠すような態度に終始したという。
 帰国後、小牧市の病院で外傷性顎(がく)関節症と診断され、医師から「なぜ放置したのか」と聞かれたという。事故は陸上自衛隊のイラク撤収に伴い、空輸の対象が陸自から米軍に切り替わる直前に起きた。池田さんは「米軍とのトラブルを避けるため、事故はないことにされた」と話している。
(東京新聞)


東京新聞
イラク派遣 被害隊員 帰国させず   
2012年8月28日 朝刊
 イラク特措法でクウェートに派遣された航空自衛隊の三等空曹(当時)、池田頼将さん(40)=新潟市中央区関屋=が米軍バスにひかれ、後遺症の残る大けがをした問題で、事故から二週間後に帰国する隊員のための専用航空機があったにもかかわらず、池田さんを乗せなかったことが分かった。
 防衛省によると、二〇〇四年から〇八年までクウェートに派遣された空自隊員のうち、二十七人がけがや病気で米軍やクウェートの病院で診察を受けた。このうち、現地で治療できなかった十人を任期の四カ月より早く帰国させた。
 池田さんは〇六年七月四日、クウェートの基地で米軍の大型バスにはねられ、顔や肩に大けがをした。
 同月十七日、任期満了の隊員を帰国させるための専用便があり、六月二十七日にテコンドーの練習中にアキレスけんを切った隊員は帰国した。しかし、顎のけがで口が開かず、食事も満足にできない池田さんの帰国は認められなかった。
 アキレスけんを切った隊員は自傷事故だったが、池田さんは米軍の関連企業の運転手が起こした交通事故の被害者。帰国によって事故が明るみに出れば、米軍に治療や補償を求めなかった対応が問題になり、日米間で摩擦が起き、空自がひそかに進めていた武装米兵の空輸に影響が出た可能性もあった。
 当時、部隊運用を担当した防衛省幹部は「テコンドーの事故は報告があったが、米軍バスによる交通事故は記憶にない。初耳だ」という。
 自衛隊の海外派遣は隊員が病気や事故に遭った場合に備え、国内に交代要員を待機させている。事故後の池田さんは痛みから執務室で横になることが多く仕事にならないため、事実上の欠員状態だったが、交代要員が送られることはなかった。

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