2012年8月5日日曜日

「(原発事故)・・・日本人は懲りない。・・・カネのことばかり考えて・・・。 カネと命、どちらが大切なのか・・・。情けない話です。」(「はだしのゲン」中沢啓治)

8月6日は広島、8月9日は長崎の原爆の日。
昨年の3.11以降二回目の原爆の日。

広島の平和宣言、「脱原発」の文言入れず(朝日新聞)
広島市の松井一実市長は1日、6日の平和記念式で読み上げる平和宣言の骨子を発表した。東京電力福島第一原発事故を受け、国に対し、「市民の暮らしと安全を守るためのエネルギー政策を一刻も早く確立するよう訴える」という。
ただし「脱原発」を求める文言は入れない意向を改めて示し、「原発の是非について市長の主張を訴え惑わすのではなく、市民や国民が議論を交わすことが大切だと感じている」と述べた。

平和宣言骨子:長崎市長、今年も「脱原発」踏み込まず(毎日新聞)
毎日新聞 2012年07月31日 16時04分(最終更新 07月31日 16時17分)
長崎市の田上富久市長は31日、長崎原爆の日(8月9日)の平和祈念式典で読み上げる平和宣言の骨子を発表した。原爆の残虐性や核兵器の非人道性を取り上げ、核兵器禁止に向けた取り組みを要請するのが主な内容となっている。東日本大震災についても言及するが昨年同様、「脱原発」には踏み込まず、エネルギー政策の転換を呼びかける。
骨子によると、今年の平和宣言では、核兵器の非人道性に関する国際世論の高まりや核兵器を巡る現状に言及。また、平和教育の重要性や政府に対する被爆者援護の充実要請、原爆犠牲者の追悼と核兵器廃絶の決意が述べられる見通し。
東日本大震災を受け「放射能の脅威を受けない社会」の実現を呼びかけるとともに、エネルギーのあり方の明確化を政府に求める方針。
田上市長は、今年の宣言での原発問題への言及について「再生可能エネルギーへの転換を求めた昨年の宣言を踏まえた」と語った。【釣田祐喜、下原知広】

いずれの市長も、票のことを気にしているのか、なんだか訳のわからん「平和」宣言をやるらしい。
3.11以降の状況を踏まえるべきその歴史的意義を理解していない。

「日経ビジネス」(8月6、13日)
「中沢啓治(「はだしのゲン」著者の告白」という記事が掲載された。
読ませる中味なので一部を以下にご紹介する。
(段落、改行を施す)

(タイトル)
被爆の地獄を伝え続ける
1945年8月6日、広島に原爆が投下されてから、67年が経った。
この時の被爆体験を基に描いた『はだしのゲン』の著者、中沢啓治。
戦争と核への憤り、そして平和への願いは月日が経っても尽きることはない。

(以下本文)
毎年、8月6日午前8時15分が来ると、僕はいつも、原子爆弾が落とされたあの瞬間に再びたたき込まれます。すさまじい閃光と、自分が逃げた道で見た光景が、鮮明に蘇るのです。
僕は、爆心地から1kmほど離れた神崎国民学校(現、広島市立神崎小学校)で被爆しました。倒れた塀と樹木の隙間で一命を取り留めました。まさに紙一重でした。
学校から我が家へ戻ろうと歩いていると、周りは「お化け」の行進です。・・・
(略)

毎年、8月6日には広島市の広島平和記念公園で「平和記念式典」が開催される。中沢氏は昨年、初めて式典に出席した。世界から薄れゆく「原爆の記憶」を守るためだ。だが、中沢氏にとって、式典は満足できる内容ではなかった。

平和記念式典の内容は生ぬるい。
被爆者が腹の底から絞り出すような、戦争を起こした日本と原爆を落とした米国への「怨念」を紹介すべきなのです。

ポーランド・アウシュビッツの博物館では、記憶をつないでいくために、執拗なほどの取り組みをしています。女性の毛髪やメガネ、亡くなった人々の靴などが山のように積み上げられている。
生々しい記憶を保存しているのです。
ポーランド人が、アウシュビッツの惨劇を忘れないために続けていることです。
すごい執念だと思います。

広島は、原爆の記憶を残すものを、次々となくしてきました。
原爆ドームすら、「都市の美観を壊すからなくせ」という声がある。
あれを撤去したら、日本はおしまいです。
日本人は本当に懲りないな、と思います。

 東京電力・福島第1原子力発電所の事故を見ても、同じことを思います。
日本人は懲りない。
結局のところ、カネのことばかり考えています。
カネと命、どちらが大切なのかと言いたくなる。
情けない話です。

僕はチェルノブイリ原発に行ったことがあります。
事故が起きた4号炉にも入りました。
25年以上経っても放射能が強い。
日本も、これから放射能の影響が出てくるでしょう。

あれほどの天災なのだから、仕方ない面もあります。
でも、日本は地震国だから、いつ地震が起きてもおかしくない。
その場所に原発を造るなんて、とんでもない発想です。
いくら便利でも、造るべきではないと思っています。

もう1つ、僕が強く言いたいのは、日本国憲法が素晴らしいものだということです。
特に、第9条の「不戦の誓い」はすごいものです。
「米国の押しつけだ」と言う人もいますが、そんなことは関係がありません。

広島、長崎の原爆投下に東京大空襲。
日本列島を焼き尽くされて、多くの犠牲を払って手にした平和憲法なのだから、絶対に守ってほしい。

「核兵器を持って国を守る」というのは詭弁です。
持っていたら、必ず使うやつがいる。
今は広島と長崎の存在が歯止めになっていますが、記憶が薄れたらどうなるのでしょうか。
次に核兵器を使う時は、広島・長崎の規模ではなく、地球規模でしょう。
核兵器は根絶しなければならないのです。

僕は一介の漫画家です。講釈しても仕方がない。
だから、自分の体験を話します。
体験から何かを考えてほしい。
講演会に出向いて話をしたり、広島を訪れる修学旅行生に話すこともあります。
これからも、こうした活動を続けていきます。
原爆を体験しているのは、僕の世代で最後。
次の世代に伝えなければならないことが、まだたくさんあるのです。
(構成:山根小雪)
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