2012年10月6日土曜日

村雲司「阿武隈共和国独立宣言」(現代書館)という小説が面白いそうだ

村雲司「阿武隈共和国独立宣言」(現代書館)という本が面白いそうだ。

早速図書館で・・・と蔵書検索したら、「該当なし」だった。
著者で検索してもアウト。
さてさてどうしたものか?

取あえず、内容を以下ご紹介。

ゲンダイネット
【田中康夫 にっぽん改国】
「阿武隈共和国」の国歌は「夢で逢いましょう」
2012年10月3日 掲載

 文芸評論家の畏友・斎藤美奈子嬢が「刺激的かつ挑発的な小説を読んだ」と教えてくれました。
 村雲司(むらくもつかさ)氏が物した「阿武隈共和国独立宣言」(現代書館)。東京電力福島第1原子力発電所の事故で「帰還困難区域」に指定された相馬郡阿武隈村の古老達が、東日本大震災から丸2年の2013年3月11日、有楽町の日本外国特派員協会で会見を開き、日本国からの分離独立を宣言する物語です。

「祖先の多くは天明の飢饉の折、餓死で失われた相馬藩の人手不足を補う為に加賀、越中、越後、能登から秘密裏に強制移住させられた困窮農民。昭和に至っては国策の開拓団として酷寒の満州へ送り込まれ、敗戦時には軍にも見棄てられて多くの犠牲者を出し、先祖代々お上の都合で振り回されてきた私達が今また、塵芥(ちりあくた)の如く扱われようとしています」

「日本国政府は長年に亘って疲弊した地域を狙い、安全神話で騙し、補助金カットで脅し、原発を中心とするエネルギー政策を進め、その杜撰(ずさん)で悪辣な政策の結果が、多くの被曝した人間と広大な被曝した土地を生み出してしまった。国民の生命を賭けた博打をやって、金儲けしようとした連中の犯罪です。これから五年、十年と経過すれば、被曝した人達は重い困難を抱える事になる。この犯罪者を日本国は見逃そうとしています」

「私達は生きる権利を高らかに主張します。老いたる者は故郷で静かに終焉を迎える権利を有し、子供達、若者達、成人は速やかに汚染地を離れ、新しい土地で故郷の仲間と共に、健康で文化的な生活を営む権利を有します。国家の責任でこの全てを早急に実行に移すべきなのです」

「国民の条件は65歳以上。滅び行く故郷の最期を大地と共に看取ろうと決意した者達が、原発事故によって如何に滅びていくかを、インターネットによるあらゆる方法で誰に隠蔽される事も無く、隈無く世界に向かって公開する」独立国の国旗は、「暮しの手帖」創刊者・花森安治に倣ってボロ布を継ぎ接(は)ぎした一銭五厘の旗。国歌は仮設住宅で歌った坂本スミ子女史の「夢で逢いましょう」と定めるのです。

「日本の美しい海、領土が侵されようとしている」と絶叫する政事屋は、「日本の海と国土は、外敵以前に放射能で侵されている」危機的な状況を見極めるセンスも欠落している、と斎藤嬢は慨嘆します。それは、強きを助け・弱きを挫(くじ)く「誤送船団・忌捨クラブ」村とて同然。鋭くも9月7日付で「日刊ゲンダイ」紙が短評を掲載した本書を紹介する「大新聞」は、果たして登場するでしょうか?
【田中康夫】

志村建世のブログ
「阿武隈共和国独立宣言」を読む
[ 読書・評論 ]
 「阿武隈共和国独立宣言」(村雲司・現代書館・1200円+税)を読みました。まだ正式な発売前ですが、アマゾン等では、すでに予約受付を始めています。この夏に大きな話題にしたい本です。原作は新宿西口スタンディング仲間でもある著者の「梅が丘通信」(俳句・文集の定期的自費出版)に掲載された短文でした。福島県飯館村をモデルとし、全村を放射能汚染された村の老人たちが国に抗議して、土地と共に滅びる覚悟の上で独立を宣言するという空想物語です。

 これに出版社から声がかかり、著者がこれまでの全人生を叩き込んだような迫力ある一編の小説が仕上がりました。私は井上ひさしの「吉里吉里人」のような、時代風刺とローカル色を強調した軽妙な作品になるかと思ったのですが、その痛快さは残しながらも、国家と国民とはどういう関係なのかを、根本から考えさせてくれる深みを見せてくれるのです。

 著者は1945年つまり終戦の昭和20年生まれです。終戦とは太平洋戦争の終りだけでなく、日本が戦争をしない国になった終戦だと思って育ったということです。それが「もはや戦後ではない」と言われるとともに憲法は邪魔物のようになり、経済発展を追求してきた果てに原発の時代がきました。その犠牲に供されたのが「阿武隈村」だったのです。

 ですから「阿武隈共和国」の憲法は、天皇に関する部分のみを除いて「日本国憲法」をそのまま採用します。「故郷の山河を捨てろと国が強要するのなら、自分たちは国を捨てる」と決意した共和国の人々によって、日本国憲法は守られ伝えられるという逆転が、ここで生じます。

 ところで、日本国はこの「国の中に国を作る」企てをどのように扱うでしょうか。それを書いたらネタバレですから書きませんが、今の日本政府が「阿武隈共和国」をやさしく包み込み、平和共存を図るとは信じられません。物語は悲劇へと進まざるをえないのです。

 しかしこれは、あくまでも小説です。著者の思考に自由な形を与えた劇的な空間です。私たちはどんな国に住みたいか、いろいろな記念日がめぐってくる夏に向けて、思いをめぐらす格好の材料になるでしょう。心からお勧めする一冊です。

阿武隈共和国独立宣言
阿武隈共和国独立宣言

0 件のコメント: