2012年10月27日土曜日

「原子力PA(パブリック・アクセプタンス=社会的受容))方策の考え方」(1991年)

「朝日新聞」夕刊連載「原発とメディア」256 「マネー」30


世論対策マニュアル

 「反原発」の声を封じ込めるため、メディアをどのように利用すればいいのか。
国費で作られたとみられるリポートがある。

 「原子力PA方策の考え方」。
PAはパブリック・アクセプタンス(社会的受容)の略語だ。
1986年のチェルノブイリ原発事故で反原発世論が高まったことを受け、科学技術庁(現・文部科学省)が日本原子力文化振興財団に作成を委託。
1991年にまとめられた。

 中心を担った「原子力PA方策委員会」の委員長は、読売新聞の論説委員だった中村政雄(79)。委員には、電力会社でつくる電気事業連合会の広報部部長や原子炉を製造する三菱重工業の広報宣伝部次長らが入った。



 リポートは、原子力の広報対象の「女性(主婦)」には「訴求点を絞る、信頼ある学者や文化人等が連呼方式で訴える。『原子力はいらないが、停電は困る』という虫のいい人たちに、正面から聞いてもらうのは難しい。ややオブラートに包んだ話し方なら聞きやすいのではないか」と指摘。
中年男性は「きちんと知識を持ったら影響力は大きい」と分析してみせている。

 その頻度について「記事も読者は三日すれば忘れる。繰り返しによって刷り込み効果が出る」とし、手法として「主婦層には生活レベル維持の可否が切り口。サラリーマン層には〝1/3は原子力″を訴える。広告に必ず〝1/3は原子力″を入れる。いやでも頭に残っていく」と提案した。

 メディアとの関係の築き方についても言及。
「原子力に好意的な文化人を常に抱えていて、コメンテーターとしてマスコミに推薦出来るようにしておく」「広報担当官はマスコミ関係者と個人的つながりを深めておく。人間だから、つながりが深くなれば、ある程度配慮しあう」と書いた。

 重点電力福島第一原発事故の後、リポートはインターネットで「世論・マスコミ対策のマニュアルだ」と指摘された。
リポートの中身は実行されたのか。
3月まで「電力中央研究所」の名誉研究顧問だった読売の元論説委員・中村に取材を申し込んだが、「古い話で覚えていないことも多い」などとして断るコメントが研究所経由で返ってきた。   (編集委員・小森敦司)


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