2012年12月30日日曜日

日本の長期停滞の最大の特徴は長い賃金下落。 金融緩和だけで脱却できるものではない。

(タイトル)
2極化する所得
賃金下げで崩れる日本経済

白民党は大胆な金融緩和によるデフレ脱却を打ち上げるが、 それで足りるのか。
日本に悪性デフレが定着した原因は賃金下げ頼みのコスト削減だった。
所得の2極化は欧米、主要新興国にも広がり、新たな「日本化」の危機も漂う。

以下、「日経ビジネス」12月24~31日合併号より抜粋

<抜粋はじめ>
 「2010年春まで約980万円あった年収が今は750万円。2年半余りで、230万円も賃金が下がって…。本当に困った」

 準大手ゼネコン(総合建設会社)で働く境田達夫氏(仮名)は吹きつける寒風に背を丸めるようにこう話す。50歳をいくつか過ぎ、現場支援部門の担当部長をしていた境田さんに”異変”が起きたのは2010年初めのことだった。

(略)

2極化の裏で経済の構造変化
 日本人の賃金が下落を続けている(上のグラフ参照)。2000年代に入り、右肩下がりが本格化してきたが、特に大きく下がり始めたのはリーマンショックから。
境田氏のように以前の年収から4分の1近い下落となるとかなり大きいが、全体平均でも2000~11年の間に約10%は減っている。

 だが、この現象は単なる賃金下落だけではない別の大きな変化をその裏に隠し持っている。その1つは、境田氏のような中間層の”没落”と、それがもたらす新たな所得の2極化
そしてもう1つは、その2極化の根底で、世界と日本経済が構造変化を起こしているという事実だ。

 129ページ下のグラフは、世帯所得の分布の中間点がどこにあるかを見る所得中央値の推移を示したものだ。
2000年には1世帯当たり所得500万円が「中流中の中流」だったが、2010年では427万円へ、10年で73万円も下落している。

 所得階層別にさらに細かく見ると、500万円以上800万円未満の中間層世帯は全体の23.8%だったが、2010年は22.7%に減り、逆に2000年に49.9%だった500万円未満層は、2010年は57.3%に増加。
「中の中」と言えそうな所得層が減り、より下の所得層が膨らんだ。

 この一方で1700万円以上の世帯は同じ期間に3.1%から2.7%へ微減にとどまった。
ここ10年の間に所得の2極化現象は、はっきりと進んでいる。

 その裏で何が起きているのか。
 
 うかがえるのは賃金下落とデフレがスパイラル的に経済を悪化させる構造の深刻化だ。

 「リーマンショック直後の2009年4月から役職者は一律毎月4万円、年間48万円の賃金ダウン。私の場合は、降格などもあってさらに100万円下げられた」

 大手自動車メーカー直系の販売会社で今年夏まで自動車修理部門の課長として働いていた西田博志氏(仮名)は、念そうにつぶやく。

(略)

 「日本の長期停滞の最大の特徴は長い賃金下落。実際には1990年代半ばから横ばいになり、2000年代に入って下落を始めている。それは日本にデフレの気配が出始め、本格化していった時期に重なる」

 元ドイツ証券ストラテジストで、副会長も務めた武者陵司・武者リサーチ代表はこう指摘する。
賃金下落が日本経済の宿痾(しゅくあ)であるデフレの重要な要因の可能性があるわけだ。
自民党は政権に復帰すれば、大胆な金融緩和を行うというが、それだけでデフレ脱却ができるような状況ではない。

(略)

<抜粋おわり>

0 件のコメント: