2013年2月23日土曜日

日米首脳会談 TPP「最終的な結果は交渉の中で決まっていく」


日本農業新聞
TPP「例外」保証なし、首相「早い段階で決断」 日米首脳会談 (2013年02月23日)

 安倍晋三首相はワシントンで22日午後(日本時間23日未明)、オバマ米大統領と初めて会談した。首相は会談後の記者会見で、環太平洋連携協定(TPP)問題について「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないとの認識に立った」と表明。帰国後に自民党と公明党に説明し、交渉参加の是非の判断について政府に一任を受けた上で、「なるべく早い段階で決断したい」と述べた。しかし首脳会談では、全ての品目を自由化交渉の対象にすることも確認しており、関税撤廃の例外を確保できる保証はない。交渉参加阻止への取り組みは正念場を迎えた。(ワシントン岡部孝典)

 TPPについて会談後に両首脳が発表した共同声明では「日本が交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされる」と指摘。その上で「最終的な結果は交渉の中で決まっていく」とし、「交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する」とした。

 また、声明は「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに2国間貿易上のセンシティビティー(慎重を要する分野)が存在すること」も認識するとした。

 自民党は、TPPについて衆院選で「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」ことなど6項目を公約に掲げた。会談後の記者会見で首相は、「オバマ大統領との会談により、『聖域なき関税撤廃』が前提でないことが明確になった」と強調。他の5項目も首脳会談で「言及した」と話した。

 交渉に参加しても衆院選公約に反しないとの認識を示したと受け取られかねず、農業者をはじめ交渉参加に反対する国民や与野党議員らの反発は必至だ。TPP交渉参加問題は極めて重大な局面を迎えた。

公約順守と言えず 「反対の声」結集を <解説>

 安倍晋三首相が日米首脳会談を受けて、TPP交渉に関し「聖域なき関税撤廃が前提ではない」ことを確認したと述べた。しかし、共同声明は「最終的な結果は交渉の中で決まっていく」としているだけで、関税撤廃の例外品目を必要な数だけ確保できる根拠とはならない。政府は、自民党が昨年の衆院選公約で掲げた判断基準を守ったとは到底言えない状況であることを認識すべきだ。

 公約は「関税問題」の他に①自由貿易の理念に反する自動車などの数値目標は受け入れない②国民皆保険制度を守る③食の安全・安心の基準を守る④国の主権を損なうような投資家・国家訴訟(ISD)条項は合意しない⑤政府調達・金融サービスなどは、わが国の特性を踏まえる――の5項目がある。これらについてはオバマ大統領に説明しただけで、大統領がどう受け取ったのかも不透明だ。また公約は6項目が一体であり、「関税問題」だけで判断することは決して許されない。

 自民党は野党時代、政府に対して情報提供と国民的な議論を求めてきた。しかし、安倍内閣は昨年12月26日の発足以来、TPPに関する情報を開示してこなかった。日本がTPPに参加した場合、どういうメリットやデメリットはあるのかも含めて、情報はまだまだ不足している。

 安倍内閣が今行うべきなのは、徹底した国民への情報開示と議論であることを肝に銘じるべきだ。政府は交渉参加の是非の判断を時間をかけずに行う危険性があり、交渉参加阻止へ国民の声を早急に結集する必要がある。



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