2013年6月25日火曜日

九州電力松尾新吾相談役、九電寄付金の停滞について「原発が再稼働すれば何てことない」と発言。その後、発言を撤回したが、「やらせ」問題を引きずる九電に対し不信が根強い。また、当初、松尾氏を擁護した古川知事にも疑念がくすぶる。

毎日JP
九電相談役:「再稼働すれば何てことない」発言に尾を引く九不信 佐賀県議会「体質変わらぬ」
2013年06月23日

 九州電力の松尾新吾相談役が、佐賀県内の施設への九電の寄付金が滞っていることに「原発が再稼働すれば何てことない」と発言した問題は、松尾氏が佐賀県側に謝罪、発言を撤回したことで、九電は幕引きしたい考えだ。しかし、一昨年の「やらせ」問題を引きずる九電に対し、同県議会には「体質が変わっていない」との不信が根強い。当初、松尾氏を擁護した古川康知事にも疑念がくすぶり、原発の再稼働問題に影響を残しそうだ。【蒔田備憲、田中韻】

 松尾氏の発言は、九電が佐賀県鳥栖市の「九州国際重粒子線がん治療センター」に寄付する予定の約40億円が滞っていることについて述べた。九電は経営難から玄海原発(佐賀県玄海町)の早期再稼働を目指しており、佐賀県議会から「再稼働を迫る脅しのような発言だ」と反発の声が上がり、抗議決議を全会一致で可決した。松尾氏本人が来県して謝罪したが、不信はなおくすぶる。

 背景には、一昨年に発覚した九電の「やらせ」問題がある。2005年にあった玄海原発へのプルサーマル発電導入を巡る公開討論会や、11年の再稼働に関する県民説明番組などで、九電は社員らによる動員、仕込み質問、やらせメールなどを行った。原発推進のためならなりふり構わない体質が批判され、今も県議会でやらせ問題の審議が続いている。

 松尾発言について、県議会の最大会派、自民県議団の留守(るす)茂幸会長は「九電のガバナンス(統治)はどうなっているのか。玄海原発の再稼働を議論する環境ではない」。民主・社民党系の県民ネットワークの徳光清孝県議も「そういう発言を平気でして、何とも思わない体質が一番の問題」と憤る。

 批判の矛先は古川知事にも向く。知事は松尾発言が飛び出した式典に同席。当初は「再稼働へのプレッシャーをかけるものとは受け止めなかった」と松尾氏を擁護した。だがその後、県議会が抗議決議を可決すると、「今後、発言には注意していただきたい」と苦言を呈し、松尾氏の謝罪後は「あの発言には問題があった」と態度を変えていった。

 やらせ問題で九電の第三者委員会は、知事と九電の意思疎通に言及し、「不透明な関係」と指摘。知事は一貫して関与を否定しているが、やらせメール問題の舞台になった県民説明番組に出演した佐賀県玄海町の農業、平田義信さん(51)は「結局、知事も九電も本質的な体質は変わっていない。2年前から追及され続けているのに、松尾氏を擁護した知事はあの発言を軽く見ていたように感じる。乗り切れると思っていたのかな」と批判する。

 九電は原発の新しい規制基準が7月8日に施行され次第、玄海原発3、4号機の再稼働を申請する方針で、松尾氏は「(県民に)重ねて理解を求めていく」と話す。一方、基準に適合すれば、古川知事は再稼働の可否について判断を迫られることになるが、平田さんは「判断を知事に委ねるのはあまり好ましくないと思ってしまう」と疑問視した。

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 ◆松尾氏と古川知事の発言の経緯◆

5月29日 松尾氏「原発を止められ、1日十数億円の赤字が出ているが、4日早く再稼働すれば何てことない」(九州国際重粒子線がん治療センターの開設式で)

6月 4日 古川知事「再稼働へのプレッシャーをかけるものとは受け止めなかった。今の時点で真意を確認しようとは考えていない」(定例記者会見で)

6月11日 古川知事「決議を重く受け止め、県議会にきちんとした対応をしていただきたい。今後、発言には注意をしていただきたい」「現時点で松尾相談役を呼んで質問を申し上げることは予定していない」(県議会の抗議決議後の一般質問への答弁)

6月14日 松尾氏「県民、県議会に不快の念をもたらし誠に申し訳ない」(県議会議長と古川知事との面会で)

6月19日 古川知事「今日までの経緯を鑑みれば、あの発言には問題があったと思っている」(県議会文教厚生委での答弁)

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 ■ことば

 ◇九州電力「やらせ」問題

 国が2011年6月、玄海原発2、3号機の再稼働に向けて開催した県民説明番組で、九電が賛成意見をメールで投稿するよう子会社などに呼びかけた。九電第三者委員会は、古川康・佐賀県知事が直前に九電幹部と面会して発言した内容が「やらせメール」の発端だったと認定。また全国初となった玄海原発へのプルサーマル発電導入に対する古川知事の事前了解を巡り「九電トップと知事に何らかの意思疎通があった」と指摘した。古川知事は県政を混乱させたことなどへの責任を取るとして自身の給料(4カ月)を全額カットしたが、「やらせメール」の誘発は一貫して否定している。


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