2013年9月26日木曜日

京都新聞社説 「国民投票法  問題点を先送りするな」

京都新聞 社説
国民投票法  問題点を先送りするな

 自民、公明両党は憲法改正の是非を問う国民投票の投票年齢を「18歳以上」に確定する国民投票改正案を、10月召集予定の臨時国会に共同提出する方針を固めた。

 国民投票法は民法の成人年齢や公選法の選挙権年齢も18歳以上に引き下げるよう求めている。だが法施行期限から3年を過ぎても実現にめどがたたないことから、国民投票だけ先行させるという。

 しかし「18歳成人、選挙権」は国民投票法の成立に際し、安倍晋三首相が第1次内閣で自ら課した「宿題」だったはずだ。改憲への環境整備を進めるためだけの法改正だとすれば、ご都合主義のそしりは免れない。

 「戦後レジームからの脱却」を唱える安倍首相が改憲の第一歩と位置づけた国民投票法は2007年5月に成立、10年5月に施行された。国民投票年齢を18歳以上と明記した上で、成人年齢・選挙権年齢の18歳以上への引き下げや、公務員の自由な改憲論議を可能にする政治的行為の制限緩和などについて、必要な法制上の措置を法施行までに講ずることなどを付則で求めた。

 ところが、これらの宿題は慎重論もあっていまだに解消できず、このままでは国民投票の実施は難しいとされている。このため付則を変更し、成人年齢などの引き下げについては期限を先延ばしして「違法状態」を解消しようというわけだ。

 だが、そうなれば「18歳成人、選挙権」をめぐる議論は再びたなざらしにされる懸念がある。

 もちろん成人年齢の引き下げなどは、影響が大きいだけに幅広い議論が必要だ。少年法、競馬法、飲酒・喫煙の禁止など準拠する多くの法令も見直さねばならず、膨大な作業が要る。だからといって先送りするのは安易すぎないか。

 特に国民投票と選挙権の年齢の足並みをそろえることは重要だ。国の最高法規である憲法の改正に関与できるのに、改憲の発議権をもつ国会議員を選べない。それでは筋が通らないだろう。若者の政治参加意識を高めるためにも、18歳選挙権は大事な課題である。世界を見渡しても、今や主流は18歳以上だ。

 国民投票法の付帯決議では、最低投票率の設定などの検討も求めたが、これらも放置されてきた。今のままだと、20%の投票率でも過半数が賛成すれば改憲が可能になる。これでは憲法の正統性そのものが疑われよう。

 問われるべきは、欠陥法のまま法施行を許し、その後も放置し続けた政治の怠慢だ。問題を先送りすべきではない。

[京都新聞 2013年09月26日掲載]

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