2014年8月22日金曜日

期待外れの経済(『朝日新聞』経済気象台2014-08-20) : 「その期待が、現実によって裏切られつつあるのが、現在の姿なのではないか。 政府もエコノミストもメディアも、金縛りのようにこれまでのシナリオに固執するのはやめて、客観的事実を見つめる時期に来ているのではないか。」

期待外れの経済(『朝日新聞』経済気象台2014-08-20)

 今年4〜6月期の実質経済成長率は、前期比年率マイナス6・8%だった。
春先のコンセンサス予測と比較すれば、消費増税後の落ち込みは予想以上に大きかったことになる。

 政府を含めた大方の見方に従えば、それは増税前の駆け込みが予想より大きかったことの反動減であり、今後は再びプラス成長に戻る(つまり、回復は途切れることなく続く)ということになろう。
しかし、そのシナリオを支える景気回復の勢いが失われつつあることを危惧するのは筆者だけか。

 インフレに質金上昇が追い付かず、生活水準を示す実質賃金は6月、前年比3・8%も減った。
労働需給は改善しているが、その中心は相変わらず非正規社員だ。
当然の帰結として、消費増税後の家計は、一部富裕層を除けば、消費支出や住宅購入には慎重だ。
円安状態が続いているにもかかわらず輸出数量は増えず、輸入価格が上昇して貿易収支は赤字が続く。
企業設備投資の行方も不透明だ。
それらを反映して、株価は明らかに浮揚力を失っている。

 周知のようにアベノミクスの成否は期待にかかっている。
物価上昇、賃金上昇、消費・投資回復、輸出拡大、株価上昇 - これだけ多くの期待が連鎖的に実現しなければ、景気回復の持続は難しい。
今年の経済財政白書にも「期待」という言葉が頻出し、消費増税後の景気回復シナリオが期待頼みであると告白しているようにも読める。

 その期待が、現実によって裏切られつつあるのが、現在の姿なのではないか。
政府もエコノミストもメディアも、金縛りのようにこれまでのシナリオに固執するのはやめて、客観的事実を見つめる時期に来ているのではないか。  (山人)


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