2016年10月26日水曜日

電通は「ブラック企業」なのか?(今野晴貴) ; 日本型雇用におけるサービス残業は、このように企業側の強大な命令権限と、考課・査定による昇進システムの下で、半ば労働者の「自主的な行為」として当たり前の慣行になってきた。もちろんこの「慣行」に従わなければ「やる気がない」とみなされて査定が下がってしまうのだから、個々人の「好み」の問題ではない。・・・今回の電通の過労死事件は、従来から存在していた「日本型雇用」の問題の延長線上に起きた事件だと言えるだろう。 / 厚労省は昨年も、電通を「時短に取り組む企業」と認定していた! 13年には男性社員が過労死し、14~15年には長時間労働で是正勧告も出てたのに。



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「悪しき日本型雇用」の典型としての電通

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こうした、過労死するほどの過酷な労働と高待遇が同時に現れる働き方は、戦後のいわゆる「日本型雇用」の特徴である。

かつて日本の多くの企業では、「終身雇用」や「年功賃金」に代表される、雇用保障や手厚い待遇という「アメ」が労働者に与えられる代わりに、部署の異動、転勤などが会社の自由に行われるなど、広範な指揮命令権、つまり「ムチ」の行使が認められていた。

このアメとムチの関係は、一見合理的に思えるかもしれないが、企業の命令に制限がない状態は世界的に見てもかなり特殊であり、労働者には相当の負担がかかるシステムだと言える。

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日本型雇用におけるサービス残業は、このように企業側の強大な命令権限と、考課・査定による昇進システムの下で、半ば労働者の「自主的な行為」として当たり前の慣行になってきた。もちろんこの「慣行」に従わなければ「やる気がない」とみなされて査定が下がってしまうのだから、個々人の「好み」の問題ではない。著名な労働研究者である熊沢誠は、このような事態を「強制された自発性」と定義している。

そうした中で、多くの過労死事件が発生していた。例を挙げればきりがないが、名だたる大企業で過労死事件は発生しており、電通でも1991年に、入社1年5ヶ月の男性が過労死している。

その男性は、無限与えられる膨大な業務量に対応するために、月平均150時間近くの長時間労働をしていたほか、上司からのパワハラなども受けていたとされており、今回のケースと酷似している。

今回の電通の過労死事件は、従来から存在していた「日本型雇用」の問題の延長線上に起きた事件だと言えるだろう。

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