2017年1月19日木曜日

アベノミクスとは何か (『日経新聞』大機小機2017/1/19) ; 華々しく登場して丸4年。いまや弓折れ、矢尽きて・・・。・・・ベノミクスという言葉は、政策決定のプロセスで思考停止をもたらす。もはや使わないほうがよい言葉なのである。

大機小機 アベノミクスとは何か (『日経新聞』2017/1/19)

 言葉というのは不思議なものだ。「3本の矢」とともにアベノミクスが華々しく登場して丸4年。いまや弓折れ、矢尽きても、言葉だけは健在のようだ。

 4日の年頭会見で、安倍晋三首相は次のように述べた。「アベノミクスをふかしながら経済をしっかり成長させていくことが私たちの使命だ」。しかし、「ふかす」対象としての「アベノミクス」とは一体何なのか。

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 マネーを増やせば物価は上がり、日本経済の「宿痾(しゅくあ)」たるデフレを脱却する。これがシナリオだったが、現状で消費者物価(生鮮食品を除く)はマイナス0.4%と、下落している。「異次元の緩和」は見事に失敗した。

 昨年9月に日銀は長期金利をゼロ%近傍に誘導する新たな枠組みに移行した。何のことはない。「金利政策」への回帰である。1本目の矢はむなしく消えた

 2本目の矢、補正予算で「景気対策」は語るまでもない。新しさはまったくなく、むしろ古いタイプの政策だ。

 安倍政権は「財政規律も守る」と言ってきた。消費税引き上げを先送りしても、経済成長の果実で財政健全化は達成可能ということだったが、この4年間に財政はさらに悪化した。国の長期債務の国内総生産比は安倍政権が誕生した4年前には143%、現在は156%である。

 (略) 

 3本目の矢である成長戦略も、過去20年の歴代内閣が言ってきたことだ。会議はたくさん立ち上げたが、この4年間で一体何が実現したのか

 実体がなくても無害ならば、それでよい。しかし、アベノミクスという言葉は、政策決定のプロセスで思考停止をもたらす。もはや使わないほうがよい言葉なのである。


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