2013年3月6日水曜日

忌野清志郎『瀕死の双六問屋』を読む(その7) 「「若い頃は良かった」と思う人間ばかりだったら、政治家どもの思う壷だ。」

江戸城(皇居)東御苑 カンザクラ 2013-03-05
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忌野清志郎『瀕死の双六問屋』を読む(その7)

第三十九話 泥水(マディ・ウォーターズ)を飲み干そう
 ・・・。もう時代はとっくに変わろうとしてるんだよ。
しがみついてる古いやり方はとっくに時代遅れだから、レコード会社は衰退してるのさ。
ベスト盤しか出せないんだ。
ベスト盤は安いコストで作れるからね。
新しいサウンドを流行らせようとか新しい音楽を売り出そうっていう気持には誰もなれなくなってしまった。
悲しいことだ。
せっかく音楽に携わっているのに。
銀行や自動車会社のようにレコード会社も合併や吸収合併をくり返して、せいぜい3つか4つくらいになっていくだろう。
多くのバンドやディレクターがリストラされるだろう。
そしてますます軽い使い捨て音楽が流通されるのだろう。
悲しいことだが、真実だろう。

 ・・・。希望を捨てない方がいい。
俺はサイコーなんだって信じるんだ。
既成の概念なんか疑ってかかった方がいい。
「なんでなんだ?」っていつも子供みたいに感じていたいぜ。
ふざけんなよ、俺がサイコーなんだっていつも胸を張っていたいだろ? 
本当は誰だってそうなんだ。
OK、そうと決まったら、誰に相談する必要もない。
もう君は世界で最高の音楽をやってるイカレた野郎になったんだ。
がんばれよ。
また新しい曲を聴かせてくれ。

第四十話  たかだか40~50年生きて来たくらいでわかったようなツラをすんなよ
 ・・・。だって俺達は常に新しい歌を作っているのに、昔のヒット曲にしか自分を見いだせない輩がとても多いんだ。
誰かにまかせていたんじゃ、過去の曲だけに流されてノスタルジーにされちまう。
人々を想い出の中に閉じ込めてミイラにしてしまおうと誰かが陰謀をたくらんでいるのさ。
上からの圧力かも知れない。
「若い頃は良かった」と思う人間ばかりだったら、政治家どもの思う壷だ。
「芸術家は常に過去をのりこえて新しい物を作ってる」 岡本太郎先生の言葉だ。
俺は芸術家になりたいと思ってるのさ。
大きな声でもう一度言おう。
は芸術家になりたいといつも思ってるんだ。
それは中学生の頃からずっと思ってることなんだ。
昨日作った歌はもう今日になったら古くなってるかも・・・と思う。
多くのファンの方々は「雨あがりの夜空に」を歌ってくれとか言うのかも知れない。
「RCは今、聴いても新しい」って言う人もいる。
でも、それは違うよ。
RCはもう古いよ。
もう10年も前に活動を中止したんだ。
古いものが良くないっていうんじゃないけど、古いものばかりやらされたんじゃたまらないぜ。
俺の身にもなってくれ。
RCなんか知らない若者が僕のライブにはたくさん来てるんだ。
お父さん達が来なくなっても、世代交代のように若者が俺の新しいバンドで踊りまくってるんだよ。
それに俺はやっといいメンバーに巡り会えたのさ。
悪いけど、俺の本心だ。ラフィータフィーはもっとすごいぜ。
過去の若かりし頃の自分にすがりついて行くのか、常に新しい発見を求めて行くのかっていう問題だ。
少しくらい年を重ねたからってわかったような顔をしてもらいたくないんだ。
俺は同世代のオヤジどもにそれが言いたい。

第四十一話 ユーモアが必要さ、僕らの僕らの間には

第四十二話 何十年ぶりのことだろう、日記をつけてるんだ

第四十三話 武田真治がやって来た

没原稿その一 フランスの友人とワインに関しての日本人向けのおはなし

(その8)につづく

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